古いシステムを脱却し、ITで他社との差別化を!
A社様との出会いは、懇意にしていたWEB制作会社の営業担当からの1本の電話。
「地元でシステム開発ができるベンダーを探している会社がある」との事で、会社案内や当社のサービス・実績を紹介するパワーポイントを持って、A社様に早速訪問した。その中で、A社様の担当である管理部のS部長から、以下の問題点を説明された。
- 現行システムの不具合が多発しているが、サポートが悪い
- 20年前のシステムで、現状の業務にマッチしていない
- トップからはIT活用で差別化を図ること指示を受けている
20年来のシステムを運用している企業ではよく聞く、現開発会社のサポート品質の低下。S部長は、今取引してるベンダーではなく、新たなベンダーと組むことで、トップからの要求に応えることを希望していた。
私たちにとってはこれ以上にないチャンスであり、早速社内に戻って対応を検討した。
「A社の全拠点を回って、現行システムの問題点を細かくヒアリングして課題を洗い出す」
「これをS部長に提案したところ、『無償でそこまでやってくれるのか』と快諾を得ました。早速私たちは手分けし、A社の7府県にまたがる11拠点の訪問スケジュールをたて、約2週間で訪問を終わらせ、結果を報告する準備を行いました。」
課題は山積み!現行システムを流用しながらリニューアルを目指す。
全拠点のヒアリングを終え、私たちは各拠点での課題の洗い出しとその課題の分類作業を実施した。
そして現状の課題を以下の4つに分類することにした。
①現行システムと実運用フローの乖離からくる作業負担
②①の結果、入力作業へのパワーが大きく、顧客対応にしわ寄せ
③経営判断に必要な情報が決定的に不足
④後工程への引継ぎが不備により2重作業
「運用面に配慮し、現行システムのリソースを有効活用しつつ、新たな機能の追加、
また作業現場でのタブレット導入による作業効率の改善をポイントに企画提案を行うことにしました」
複数ベンダーか、1ベンダーか・・
どの企業様でも、IT投資をする上では、複数社からの提案を受け、それを社内プロジェクトチームで選定を行う。
今回もトップの号令の下、複数社でのプロポーザルが実施された。
S部長によると、私たちの企画提案は1番の評価を得たが、基幹システムと現場タブレットシステムを切り分けて導入することを検討されているということだった。
「私たちの得意分野である「タブレット開発」をさらに注力して提案しました。
また、この案件の検討中に当社で受注し各拠点へ導入したデジタルサイネージとの連携も視野にいれたご提案は非常に高評価を頂きました」
結果、トップから1ベンダーでのシステム構築のゴーサインを頂き、ようやく受注となった。
システム開発の壁出現!ソースコードがない!?
私たちは5人の開発プロジェクトチームを編成し、開発に取り掛かることになった。今回のポイントは「既存リソースの有効活用」である。これを実現するべくS部長に現行システムのソースコードの開示を依頼。しかし返ってきた答えは「ソースコードは現行開発ベンダーの所有権がある」とのことだった。
これは、既存システムをリニューアルしようとする際には、ありがちなことでもある。
「当初からソースコードが出てこないのは想定内でした。であれば、やる事はただ一つ。既存システムの動きを見つつ業務レベルでの分析を行うことです。しかし、これには相当な根気とパワーが必要でした。
メンバーは何としてもA社様が当社を選択してくれた事に報いよう、この気持ちで何とか乗り越えました」
タブレットは現場作業の効率化につながるか?
今回のシステム構築のポイントの一つがタブレットによる作業改善であった。全て手作業や紙の記録で回っていた現場へいかにタブレットを浸透させるか?プロジェクトメンバーによる試行錯誤が始まった。
「とにかく作業者が使いやすい画面設計にこだわりました。作業者に使ってもらう事が出来なければ、作業改善は出来ません。ボタンの配置、文字の大きさ、画面のデザイン、現場の作業者を交え意見・要望を設計に落とし込むことで、紆余曲折を経て完成させました。」
タブレットにより現場での入力完結とデータ連携が実現し、課題であった後工程への引継ぎによる作業品質向上は、今回のシステムで一定の効果を得ることができた。
コロナ禍だからこそのIT化
A社様に新システムをリリースしたのは、開発着手から約1年半後の事。リリースした時点で発生した障害も着実に消化し、システムが安定運用に入った現在は、次の段階へと移行しつつある。A社様では、新システムと営業データベースを連携し、より顧客の囲い込みができる仕組みを模索している。私たちが行った一連の開発作業は、お客様との信頼関係を築く事が十分にできた。昨今のコロナ禍だからこそ必要なIT化を、お客様としっかり提案・構築する事が私たちのこれからの役割である。